葬儀でマスクを着用して参列する場合、その振る舞いにも、いくつかの細やかな配慮が求められます。マスクで顔の半分が隠れているからこそ、いつも以上に、丁寧で分かりやすいコミュニケーションを心がけることが大切です。まず、受付での挨拶です。マスクをしていると、声がこもり、相手に聞き取りにくくなることがあります。受付の方に「この度はご愁傷様です」とお悔やみを述べる際には、いつもより少しだけはっきりとした声で、そして相手の目を見て、ゆっくりと話すようにしましょう。軽く会釈をするだけでなく、丁寧に頭を下げることで、マスクで隠れた表情を補い、敬意を伝えることができます。次に、最も重要な場面である「お焼香」の際のマナーです。お焼香の最中に、マスクを外すべきか、着けたままで良いのか、迷う方も多いでしょう。これについては、明確な決まりはありませんが、基本的には「着けたままで問題ない」とされています。無理に外す必要はありません。ただし、もしご自身が、故人に対して、きちんと顔を見せてお別れをしたい、と強く願うのであれば、焼香台の前に進んだ際に、一時的にマスクを外し、焼香と合掌を終えた後、再び着けて自席に戻る、という対応も、丁寧な作法として考えられます。その場合は、外したマスクの扱いに注意が必要です。ポケットに無造作に押し込むのではなく、専用のマスクケースや、清潔なハンカ-チに包んで、スマートに収納しましょう。また、通夜振る舞いや精進落としといった、会食の席での対応も重要です。食事中はマスクを外しますが、席を立って移動する際や、他のテーブルの方と話をする際には、再びマスクを着用するのが、周囲への配慮となります。これを「マスク会食」と呼び、感染症対策として推奨されています。葬儀の場では、言葉を交わす機会は限られています。だからこそ、一つ一つの所作や、視線、お辞儀の角度といった、非言語的なコミュニケーションが、より大きな意味を持ちます。マスクで表情が見えにくい分、その立ち居振る舞い全体で、故人を悼み、ご遺族をいたわる気持ちを、表現することを心がけましょう。
マスク着用時の葬儀での振る舞い