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葬儀の返礼品で選ばれる定番とその理由
葬儀の返礼品には、どのような品物が選ばれるのが一般的で、その背景にはどのような理由があるのでしょうか。返礼品に選ばれる品物には、「不祝儀を残さない」という、日本の葬送文化に根ざした独特の考え方に基づいた、いくつかの共通した特徴があります。これは、いただいた悲しみを、いつまでもその家に引きずらせないように、という、贈る側からの深い願いと配慮が込められた、美しい習慣です。この「不祝儀を残さない」という考え方から、返礼品の定番となっているのが、いわゆる「消えもの」と呼ばれる、使ったり食べたりしたら、形として残らずになくなる品物です。その代表格が「お茶」や「コーヒー」といった飲み物です。飲み物は、性別や年齢を問わず、誰が受け取っても困ることが少なく、日持ちもするため、非常に実用的な選択肢です。また、故人を偲びながらお茶を飲んでいただくことで、供養にも繋がると考えられています。古くから、お茶にはその場の境界を区切り、日常と非日常を分ける力があると信じられており、弔いの儀式を終えて日常に戻る、という区切りを象徴する品物としても、非常にふさわしいのです。同様に、「海苔」や「砂糖」、「お菓子」といった食品も人気があります。海苔は、軽くて持ち帰りやすく、日持ちもするため重宝されます。砂糖は、仏教で白が穢れのない清浄さを表すことや、かつては非常に貴重な品であったことから、敬意を示す品物として用いられてきました。お菓子を選ぶ場合は、日持ちのするクッキーやおかき、バームクーヘンといった焼き菓子が一般的です。食品以外では、「石鹸」や「洗剤」、「入浴剤」といった日用品も定番です。これらは「悲しみを洗い流す」という、非常に分かりやすい意味合いが込められており、消えものの一つとして広く選ばれています。また、実用性の高い「タオル」や「ハンカチ」もよく用いられます。タオルやハンカチは、涙を拭う布として、悲しみの場に寄り添う品物とされています。ただし、タオルなどを選ぶ場合は、不幸が続くことを連想させないよう、白やグレー、紺といった地味な色合いで、シンプルなデザインのものを選ぶのがマナーです。このように、葬儀の返礼品に選ばれる品物には、ただ実用的であるだけでなく、故人を悼み、受け取った人のその後の平穏を願う、ご遺族からの静かで温かいメッセージが込められているのです。