ご家族が亡くなられてから、火葬・葬儀を行うまでの日数、すなわち「安置期間」は、ドライアイスの使用量や費用に直接的な影響を与える、非常に重要な要素です。この安置期間が、なぜ変動するのか、そしてそれがドライアイスの処置にどう関わってくるのかを理解しておきましょう。まず、日本の法律(墓地、埋葬等に関する法律)では、「死亡または死産後二十四時間を経過した後でなければ、火葬を行ってはならない」と定められています。これは、過去に仮死状態からの蘇生の可能性があったことなどから、死亡確認の確実性を期すために設けられたルールです。したがって、どんなに急いでも、最低一日はご遺体を安置する必要があります。しかし、現代の日本では、この最低限の日数で火葬まで進めるケースは、むしろ稀です。その最大の要因が、前述の通り「火葬場の混雑」です。特に、友引とその翌日、連休明け、年末年始などは予約が殺到し、亡くなられてから火葬まで数日間待つのが当たり前となっています。この「待機日数」が長くなればなるほど、ご遺体の状態を良好に保つために、より多くのドライアイスと、より頻繁な交換が必要になります。通常、葬儀社のスタッフは、一日に一度、ご自宅や安置施設を訪問し、昇華して減ってしまったドライアイスを新しいものと交換・追加します。しかし、夏場の気温が高い時期や、安置期間が五日、一週間と長期にわたる場合には、一日に二回訪問したり、一度に置くドライアイスの量を増やしたりといった、より手厚い処置が必要となることもあります。当然、それに伴ってドライアイスの費用も加算されていきます。また、長期間の安置では、ドライアイスによる冷却だけでは、お体の変化を完全に防ぐことが難しくなってくる場合もあります。特に、お顔の周りの変化を抑え、穏やかな表情を保つためには、冷却だけでなく、専門的な知識に基づいた適切な処置が求められます。このように、火葬までの日数は、ご遺族の希望だけでは決まらない、外的要因に大きく左右されるものです。そして、その日数が、故人様をお守りするためのドライアイスの処置内容と費用に、直接的に、そして密接に関わってくるという現実を、私たちは理解しておく必要があります。