葬儀で故人ゆかりの音楽を流すことを決めた際、次に考えるべきは「どのタイミングで、その曲を流すか」という、演出上の問題です。音楽は、その流し方一つで、式の雰囲気を大きく左右します。ここでは、葬儀の流れの中で、BGMを流すのに効果的な、いくつかのタイミングをご紹介します。まず、最も一般的で、取り入れやすいのが「開式前」と「閉式後」です。参列者が式場に入場し、式の開始を待つ間、あるいは、全ての儀式が終わり、参列者が退場する際に、BGMとして静かに音楽を流します。この時間帯は、儀式の進行そのものには影響を与えないため、比較的自由な選曲が可能です。穏やかな曲を流すことで、参列者の心を落ち着かせ、故人を偲ぶための雰囲気作りをすることができます。次に、より印象的な演出となるのが、儀式の最中に音楽を流す方法です。その一つが、「お焼香」の時間です。参列者が、一人ひとり、祭壇の前に進み、故人と静かに向き合う、この最も個人的な時間に、故人が好きだった曲を流します。メロディーと共に、故人との思い出が蘇り、より深い祈りの時間となるでしょう。ただし、読経と重ならないよう、僧侶の許可を得るなどの配慮が必要です。もう一つの効果的なタイミングが、「お花入れの儀(最後のお別れ)」の時です。ご遺族や親しい方々が、棺の中の故人に、花や思い出の品々を手向ける、最も感動的なこの場面。ここで、故人の人生を象徴するような、特別な一曲を流すことで、その感動は最高潮に達します。参列者の涙を誘い、心からの感謝と別れの言葉を引き出す、非常にパワフルな演出となります。また、故人の生涯を写真で振り返る「メモリアルムービー」を上映する際には、その映像に合わせたBGMを選ぶことが不可欠です。映像と音楽がシンクロすることで、その物語は、より一層、参列者の心に深く刻み込まれます。どのタイミングで、どの曲を流すか。それは、ご遺族が、この葬儀を通じて、何を一番伝えたいか、というメッセージそのものです。葬儀社の担当者とよく相談し、故人にとって、そして参列者にとって、最も心に残る、最高の音響演出を、ぜひ実現してください。