ご遺族として葬儀を主催する際、参列者の方々に、マスクの着用をどのようにお願いすれば良いのかは、非常にデリケートで、悩ましい問題です。強制するような印象を与えたくはないけれど、高齢の親族も多いため、できるだけ安全な環境でお見送りをしたい。その想いを、角を立てずに、スマートに伝えるための方法を考えてみましょう。まず、最も穏やかで、一般的な方法が、受付や会場の入り口に、案内板を設置することです。「皆様へのお願い」といった表題で、「本日のご参列に際し、マスクの着用は個人のご判断にお任せいたします。しかしながら、会場内には高齢の方や基礎疾患をお持ちの方もいらっしゃいますので、ご配慮いただけますと幸いです」といった、柔らかい表現で協力を促すのが良いでしょう。あくまで「お願い」というスタンスを貫き、判断を相手に委ねる形にすることで、心理的な抵抗感を和らげることができます。また、アルコール消毒液を、案内板の横に設置しておくことも、無言のメッセージとして有効です。「感染対策にご協力ください」という姿勢を示すことができます。もし、もう少し踏み込んで着用をお願いしたい場合は、案内状や、葬儀の案内の連絡をする際に、事前に一言添えておく、という方法もあります。「誠に恐れ入りますが、当日は、高齢の親族もおりますため、会場内ではマスクの着用にご協力いただけますよう、お願い申し上げます」。このように、明確な理由(高齢の親族がいるため)を添えることで、相手も納得しやすくなります。当日の受付で、マスクを持っていない方のために、予備のマスクをいくつか用意しておくのも、非常に親切な対応です。受付係の方から、「もしよろしければ、お使いください」と、そっと手渡すことで、相手に恥ずかしい思いをさせることなく、着用を促すことができます。大切なのは、マスクの着用を、厳格な「ルール」として押し付けるのではなく、参列者一人ひとりの「思いやり」に訴えかける、という姿勢です。ご遺族の、その謙虚で誠実な態度が、会場全体に、互いを気遣う温かい雰囲気を作り出し、結果として、故人を心静かに見送るための、最も安全で、安心な空間を創り上げることにつながるのです。
遺族としてマスク着用をどう案内するか