葬儀におけるマスク着用は、感染症対策や、周囲への配慮として重要な役割を果たします。しかし、これが夏の季節となると、話は少し変わってきます。高温多湿の日本の夏において、屋外での活動を含む葬儀でのマスク着用は、「熱中症」という、命に関わる深刻なリスクを伴うことを、私たちは忘れてはなりません。夏の葬儀では、どのような場面で熱中症のリスクが高まり、どのように対策すれば良いのでしょうか。まず、最も注意が必要なのが、告別式の後の「出棺」と、火葬場での「待ち時間」です。これらの場面は、屋外、あるいは冷房の効きが十分でない場所で、喪服という熱がこもりやすい服装のまま、長時間過ごさなければならない可能性があります。マスクを着用していると、体内に熱がこもりやすくなるだけでなく、喉の渇きを感じにくくなるため、知らず知らずのうちに脱水症状が進行してしまう危険性があるのです。特に、高齢の参列者や、体調に不安のある方は、注意が必要です。対策としては、まず、ご遺族側が、参列者の健康を第一に考える姿勢を示すことが大切です。例えば、受付で冷たいおしぼりや、塩分補給ができるタブレット、小さなペットボトルの水などを配布する、といった配慮は、非常に喜ばれるでしょう。また、出棺の際などには、葬儀社のスタッフから「屋外では、熱中症のリスクがございますので、マスクは外していただいても結構です。周りの方と、十分な距離をお取りください」といったアナウンスをしてもらうのも、有効な方法です。参列者側も、自衛の意識を持つことが重要です。少しでも気分が悪い、めまいがすると感じたら、決して我慢せず、すぐに近くのスタッフに声をかけ、涼しい場所で休息を取るようにしましょう。葬儀という厳粛な場で、体調不良を訴えるのは申し訳ない、と感じるかもしれませんが、無理をして倒れてしまっては、かえってご遺族に大きな心配と迷惑をかけてしまいます。故人を悼む気持ちは、大切です。しかし、それ以上に、今を生きる私たち自身の命と健康が、何よりも優先されるべきである、ということを、忘れてはなりません。夏の葬儀では、マナーとしてのマスクと、健康を守るための判断を、賢く使い分ける柔軟性が求められるのです。
夏の葬儀でマスクは熱中症のリスク